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日出処/椎名林檎 2014・日
"さすがプロの仕事ですね"というのが、この作品に関する感想だ。デビュー後何年経っても、一般人も玄人も満足させるような作品を作れるミュージシャンはなかなかいない。この作品はプラスの意味での評価もさることながら、それを"仕事"としてなし得た椎名林檎のプロ意識に敬意を表すると共に、やや疲れる作品であったことも否めない。

タイアップ曲が多いアルバムは、アルバムとしては一般的につまらないことが多いと思う。タイアップ曲はクライアントの意向も大いに反映されるから、1曲ごとの個性が際立っていたとしても、アルバムとして集約した場合バランスが悪くなる傾向がある。本作品ではタイアップ曲群が珍しく後半に集中していて、何とも言えない疾走感を持続するdriving forceにもなっている。ワールドカップのテーマが浮かないのがすごい。そして前半はオリジナルナンバーが中心で、彼女が表現したいことをまずリスナーに届け、皆が知っているシングル曲が雪崩のように続くというユニークな構成だ。最後まで飽きることはない。他の作品で後半ダレることはよくあるが、それがない。"CDにありがちな"ことが排除されている。

このような作品は素晴らしいと思う反面、作り手側の"ねらった感"も透けて見えてしまい、表現者の作品を堪能するのに合わせて、仕事人としての仕事っぷりを見せつけられているようで疲れる点も否めない。仕事帰りには聴きたくないアルバムだ。勿論永年音楽シーンの第一線で活躍するだけのことはあると感じさせられる作品であることは疑いようがない。ただ、音楽を聴いていると、作り手が一生懸命ペンを動かしたり楽器を弾いている光景が浮かんできてしまい、自由さや純粋な遊び心に欠けるような気がする。


推薦者:hammer
| hammer | ディスクレビュー-邦楽さ行 | 08:37 | comments(0) | - | - | - |
小さな生き物/スピッツ 2013・日
先日スピッツの初期のアルバムを聴いて比べてみたが、編曲レベルが格段に上がっていることに改めて驚いた。特に2000年以降のベースラインがすごい。初期の頃は手探りで、背伸びしてアップアップしている曲も多かったが、今は音を手のひらで転がしているようだ(作っている側、演奏している側は決してそんなことはないと思うが)。

前作の際のインタビューで「最近は1曲単位でDLする世の中だから、1曲単位で聴きやすい曲を作るようになった」と草野マサムネが語っていたが、今回もそれは継承されている。1曲が3分〜4分と短く、ポップで聴きやすい曲ばかりである。ただしタイアップ曲が少なくタイトル「生き物」の通り、自然や生物をテーマとした曲が並んでいる(スピッツ全般としてそういうテーマの曲が多い傾向はある)。

個人的にはアルバム全体が一つのストーリーとなっている方が好きなので、今回のようなポップな曲ばかりあつめたアルバムはあまり好きではない。このアルバムも悪くはないのだが、『8823』『三日月ロック』のような骨太のアルバム再来を望む。ただ、ライブで聴いた方が格段に良い場合が多いので、11月のライブが楽しみである。


推薦者:hammer
| hammer | ディスクレビュー-邦楽さ行 | 09:08 | comments(0) | - | - | - |
May The House Be With You/SUGIURUMN 2013・日
 SUGIURUMNの5年ぶりのアルバムである。残念ながら最近生で拝む機会はないのだが、リリース自体はとても楽しみにしていた。今回はタイトルを反映するように、縁が深いミュージシャン(日高央、曽我部恵一、畠山美由紀、Kram 他)が多数参加しており、ダンスミュージックながらあたたかさ、ノスタルジアを感じる仕上がりとなっている。前作、前々作よりもイケイケ度は低い。

改めて聴いて感じたが、SUGIURUMNはJ-POPの世界の人だ。歌詞は英語やインスト中心であるが、サウンドの構成はJ-POPそのもの。あまりダンスミュージックになじみがない方でも、抵抗感なく聴くことができるのではないだろうか。

ちなみに1曲めを先日The Culture Partyで流したのだが、リリースが間に合わずiTunesでダウンロードしたSingle Versionとなった。それを聴いたときは実は期待はずれだったが、Album Versionを聴いて印象が変わった。こちらの方が断然いい。Single Verはイントロが唐突な感じがするが、Album Verは準備運動のような4小節を挟んでくれていて、すんなり曲の世界に飛び込める気がする。


推薦者:hammer
| hammer | ディスクレビュー-邦楽さ行 | 22:26 | comments(0) | - | - | - |
とげまる/スピッツ 2010・日
スピッツの3年ぶりのニューアルバム。またファンとしてはスピッツのメディア露出(特に比較的まともな音楽雑誌)が増えたのがうれしい。ある雑誌にあったが、結成から今まで解散も活動休止もメンバーチェンジさえなく、音楽以外の活動をいっさいしてこなかった希有なバンドである。わたし自身はこの3年なんだかんだいいつつも、2回も観る機会に恵まれあまりインターバルが長いとは感じなかった。特にこのアルバムはよくありがちなレコーディング→リリース→ツアーではなく、レコーディング→ツアー→リリースという形をとってくれたので、レコーディングしたばかりの新作をライブで聴けるというファンにとっても配慮した形式をとっている。

さて、今作は7曲ものタイアップ曲が含まれているというだけあって、アルバムとしてのテーマみたいなものや流れが他のアルバムよりは薄い気がする。草野マサムネも1曲1曲DLする時代になったからそういうのも意識したといっていたし。1曲1曲がポップだが、結構流れがあるアルバムが好きなわたしとしては他のアルバムよりは聴かなくなるかも。

ただ単なるタイアップ曲ばかりを集めた所謂近年のベストアルバム的な色合いも強いが、単なる近年のではなくこれまでのスピッツがやってきたサウンドの集大成的なところがあるのが心憎い。一般的にスピッツの十八番ともいえるアコースティックサウンド、一聞して音が薄そうな曲でも裏が複雑なサウンド構成になっている曲等結構バラエティに富んでいる。こういうサウンドの広さは、さすが業界ファンが多い(タイアップ依頼が今でもしょっちゅうくる)バンドだなと思った。

これからリリース後のツアー後半戦が始まる。久しぶりに小規模ホールで観てみたい。本当にスピッツのチケットを取るのは難しく(アリーナ公演の後そのためにファンクラブにも入ったが難しい)、神頼みである。


推薦者:hammer
| hammer | ディスクレビュー-邦楽さ行 | 23:20 | comments(0) | - | - | - |
It's So Easy/サンタラ 2009・日
サンタラを初めて聴いたのはたぶん2004年のフジロックだったと思う。THE ALAN SMITHY BANDのかっしーさんの大学の後輩ということで、名前は聞いたことがあったので、時間もあったし彼らの出演するAVALONに足を運んでみた。ブルージーな曲調と田村キョウコの伸びやかな声が印象的だった。そして東京に戻った後にCDを買い求め、アランスミシーとの対バン等にも足を運びといって今に至る。新しい邦楽のバンドを発掘しなくなり、そして洋楽邦楽関係なく特定のミュージシャンを追いかけなくなってもサンタラだけはコンスタントに買い続けている珍しいバンドだ。

しかしサンタラというのは珍しいバンドだと思う。わたし個人の考えでは、たいていのバンドは1stはこれまでのベストアルバム的な位置づけアルバムとしてのカラーが定まっていないものが多くて、2枚目・3枚目と進むにつれてアルバムごとのテーマを定めながら楽曲作りを進めていくバンドが多いと思うのだが、サンタラは1st、2ndはジャケットワークも含めてアルバムのテーマが極めて明確で完成されているバンドだった。ところが、3rd以降逆にカラーやテーマが散在化していくように思える。曲のクウォリティーが下がったとかそういうことでは決してないが、ちょっと不思議な感じがした。 『It's So Easy』は彼らがレーベルから独立した最初のアルバムだが、このアルバムについても同様のことが言える。

サンタラの方向性ってどういうものなんだろう?本作にも名曲はたくさんあるのだが(『真夜中の虹』『三番目の恋人』『Nobody Girl, Nobody Boy』『安全ピンを探してる』etc)一貫したテーマみたいなものは見えない。そういうのを作るのがミュージシャンとしては必須です、みたいなことはないのだがちょっと不思議。ライブも一貫していいんだけど。逆に「もっとマイペースに自分たちのやりたいことをやりたい」という意識の現われなのだろうか。ちなみに今日は密会マニア(サンタラのライブ)なのだが、休日出勤のため行けません(泣)


推薦者:hammer
| hammer | ディスクレビュー-邦楽さ行 | 21:24 | comments(0) | - | - | - |
愛と笑いの夜/サニーデイ・サービス 1997・日
サニーデイ・サービス自体実はリアルタイムでまじめに聴いたことがない(シングルはありますが)ミュージシャンだったけど、昨年再結成してフジロックで観て、昔の忘れ物を拾ったようなそんな気分になった。自分が人生で一番最初に生で観たロックバンドは実はサニーデイ・サービスだった。

いつも邦楽のレビューで書くことだが、洋楽ばかり聴いてて邦楽を聴いて実は日本語に飢えていたことに気づかされる。サニーデイ自体いいアルバムはたくさん出ているけれど、この『愛と笑いの夜』はまさにその傑作の1枚だろう。ギターの音が紅茶と蜂蜜のような歌詞がとろけてそうな#9や、でも甘くはないような#1、#3、ちょっと拗ねた感じの#4、あたたかくて冷たい#5etc・・・。曲によって微妙なメリハリがあるけど、アルバムのテーマから外れることはない。アルバムタイトル通りのようにみえて、でも深読みすると『ロンドンと霧』のように『愛と笑い』だけじゃない気もする。 しかし曽我部恵一ってなんでルックスからは想像できない(失礼)こんなサウンド作れるの?


推薦者:hammer
| hammer | ディスクレビュー-邦楽さ行 | 22:17 | comments(0) | - | - | - |
三文ゴシップ/椎名林檎 2009・日
椎名林檎の久々の新作。Cocco同様女性ミュージシャン特集の準備がてら日本の女性ロックミュージシャンの歴史を振り返ったが、彼女もまた日本のロックシーンに一石を投じた一人だと言えると思う。単に歌うだけではなく、自分で楽曲を作り、演奏もこなすという女性ロックミュージシャンは日本だけではなく世界でもこれまでも決して多くはなかった。 彼女もまた独特の世界観を持ち、彼女にしかかけない言葉を並べるミュージシャンだったが、時には必要以上に「女性」を演じる姿に耐えられなくもあった。(このへんについて詳細は過去のTEXTを見てみよう。)
ただ、子供を産んだからか彼女自身が年齢を重ねたからか、いい意味で丸くなったと思う。東京事変をはじめ、他のミュージシャンとのコラボレーションが影響しているのかもしれない。 『三文ゴシップ』はこれまでの作品よりも薄くて、初期の椎名林檎が好きという人には物足りないかもしれない。ただ、「こういう音楽を作らなきゃ」みたいな肩肘はったものがなくなって彼女自身が既成概念としての「椎名林檎」から自由になっている気がする。また、楽に生きるために坂口安吾風に言えば「堕落」したのかもしれない。しかし楽になったとはいえ、彼女がこれまでにミュージシャンとして歩む過程で経験して来たことが決して無駄になっていない、いやむしろそれらを糧にしていると思う。それがこの作品には、よく表れている。 

推薦者:hammer
| hammer | ディスクレビュー-邦楽さ行 | 00:39 | comments(0) | - | - | - |
さざなみCD/スピッツ 2007・日
今更ながらさざなみレビュー。聴いた時は前々作『三日月ロック』や『隼』と比べて印象に残らなかったのだが、スピッツ至上一番バンドサウンドが強い作品になっている。『魔法のコトバ』『ルキンフォー』といったシングル曲が他の曲に際立つことがなく、アルバム全体が大きなうねりとなり、グルーヴを奏でている。どっしりとしていて、ライブで聴くと数倍いい。謙遜好きのスピッツだから『さざなみ』ではなく『大波』とか『津波』にしてもよかったのではないかと思う。(但し津波なら、サザンのパクリかと思われそうだが)

ただし長所の裏返しは短所であり、それがアルバム全体のメリハリを欠くことにもなっている。それは前作の『スーベニア』にも言えていて、いいアルバムだけどどの曲がすごくいいとか(名前がなかなか覚えられない)、曲と曲とのつなぎで驚かされるとか、もし他人に貸すというシチュエーションになったときにこの作品の「売り」を具体的に説明できなさそうな気がする。

ただライブレポートでも書いたように、スピッツは元々ライブバンドであるし今でも精力的にライブを行っているので、絶対にライブで聴いてからCDを聴いた方がその受ける印象は違う。昔の『チェリー』や『空も飛べるはず』のヒットで世間が勝手に描いたポップ/フォークバンドではなく、スピッツはロックバンドだと改めて認識せざるを得ない。 

このアルバムとは別の話だが、2000年以降正確に言えば『隼』以降スピッツはミキシングだとか音響についてのこだわりを明確にし始めたので、もし音響に興味がある人がいれば聴き比べてみたらおもしろいかもしれない。ただし、旧作は再リリース時にはすべてリマスタリングされているので旧作はレンタルか中古CD屋で探すか、わたしみたいに昔のアルバム買いあさった人に借りるしかないが。 


推薦者:hammer
| hammer | ディスクレビュー-邦楽さ行 | 21:13 | comments(0) | - | - | - |
What Times Is Summer Of Love?/SUGIURUMN 2007・日
夜にハウスを聴くと眠れなくなる。わたしは車の運転は大の苦手だが、思いっきり高速道路を突っ切りたくなる。ハウスミュージックとはわたしにとって大量に摂取しすぎるとかなりやばいドラッグのようなものだ。
さてSUGIURUMNの新作だが、rowetta やMARK GARDENERといった90年代初頭にミュージックシーンを引っ張っていた立役者達が数多くゲストヴォーカルとして参加している。SUGIURUMN自身が影響を受けたミュージシャン達なのだろうが、彼らへの敬意が1曲1曲に現れているとっても真剣なアルバムである。聴いているほうはただ踊っていればいいのだろうけど。

それにしてもSUGIURUMNの音はいつもキラキラしてるよなあ。深夜残業のタクシーの中で聴きたくなるのはなぜか必ずSUGIURUMNである。


推薦者:hammer
| hammer | ディスクレビュー-邦楽さ行 | 01:33 | comments(0) | - | - | - |
Wait, Catch & Run/サンタラ 2006・日
はっきり言って地味なバンドだが確実に期待を裏切らずにいい音を届けてくれるサンタラ。何度聴いても飽きないメロディ。音楽として聴くにしろBGMとしても、聴く者の都合に合わせて変化してくれる。
サンタラの歌詞は脈略がないが、その無数の言葉によって一つの世界を形成している。時には愛する人へのラブレターであり、世の中への小さな批判だったりする。ここまでメロディとことばをうまく使えているミュージシャンはなかなかいないと思う。彼らは曲を作るときに苦労してるのだろうか、それとも自分たちの思いのままにメロディとことばが転がってくるのだろうか。

前作『Rivermouth Revue』時よりも強気になっている。歌詞にしろ曲にしろ、田村キョウコの歌声にしろ。このまま勢いにのってほしい。そういえばわたしはフジでは一度見たが、単独公演に一度も出かけていない。ぜひ一度生のサンタラワールドに触れてみたい。


推薦者:hammer
| hammer | ディスクレビュー-邦楽さ行 | 11:24 | comments(0) | - | - | - |