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Vo.3 MARK GARDENER
歌うマーク

 『平家物語』に出てくる「盛者必衰」という言葉は、我々の体に染み付いている言葉の一つである。しかし今は故人となったある女流作家が言っていたが「年輪を重ねるということはありがたいこと」ではある。
 8月に都内であった、マーク・ガードナーのライブに行かせて頂いた。マーク・ガードナーといえばいわずと知れた元ライドのフロントマンだが、某大物バンドのベーシストである相方とは違って、今はソロとしてよくいえばマイペースに悪く言えばひっそりと活動している。フジロックのステージではライノセラスのゲストヴォーカルとして登場したものの、ほとんどの聴衆は気づかなかったのではないだろうか。そのマークのソロライブもとても小さなライブハウスで行われた。集まったファンも3桁には満たなかったのではないだろうか。
 だがそのパフォーマンスには目を見張るものがあった。12弦ギター1本でのアコースティックライブでは、「彼はギターを抱えて歌うために生まれてきたのだ」と思わざるをえなかった。ライドでの成功、メンバーとの不仲、脱退そして解散、アニマルハウスの結成と解散と、過去のメンバーとは和解したらしいが彼の音楽人生は決して右肩上がりとはいえない。しかしそこで受けた喜びや悲しみ、苦しみをすべて受け入れ肯定していきたいという強い意思が感じられた。簡単に言葉には出来ないが、小1時間のライブで彼の36年間の人生の片鱗が見えた気がした。
 ライブの後ライド時代の音源を聴いてみたが、確実に歌が上手くなっているし何よりも表現力に幅が出ている。それは彼の経験や人生がそうさせているからだろう。マーク・ガードナーというミュージシャンは数字だけで見れば確かに衰えた盛者かもしれない。しかし、年輪を重ねることで彼は成長し人間として強くなりその才能は花開いている。ライブで『Beautiful Ghosts』を聴いて、自分自身もそうありたいと強く感じた。
| hammer | ロックな人たち | 22:33 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
Vol.2 椎名林檎
何故に女は女王様願望を持つ?

 まず最初に言っておこう。わたしは椎名林檎が嫌いだ。彼女の音楽性・才能は高く評価する。でもわたしは彼女が嫌いだ。

 わたしと彼女が出会ったのは、おそらく高校2年の秋。愛媛の新居浜という恐ろしく閉鎖的な町でわたしは高校生活を送っていた。そのとき深夜に放送していたTOWER COUNTDOWN(現:JAPAN COUNTDOWN)というタワーレコードのチャートを伝える番組の中で、大阪梅田店のヒットチャートで、堂々1位を獲得していたのが『歌舞伎町の女王』だった。
 他店では10位にさえ入らない曲がなぜ1位?しかも椎名林檎って誰よ?てな感じで、早速あの町で唯一まともだったレンタルビデオ屋・BOMに出かけて、CDを見に行った。しかも当時オリコンで30位にも入らないような曲だから、BOMにも1枚しかなかった。しかも閉鎖的で保守的なあの町で聴かれることもなく、誰も借りてない新品だったような気がする。
 早速借りて帰ってCDをまわす。それを聴いて、ぶったまげた。おお、すげえ。日本でかつてこんなロックな女性がいただろうか。わたしはカセットテープに入れて毎日聴いた。たった3分も満たない曲ながらメロディもストーリーも完璧である。

 しかし、そんな彼女の才能を世間がほっておくはずがなかった。3rdシングル『ここでキスして。』がスマッシュヒット。アルバムもオリコン1位を取って、ミリオンセラーだった。ようやくわたしの周りでも林檎が騒がれ始めた。しかし、冷めていたわたしは自分の好きなミュージシャンが売れていくのを好ましく思わなかった。でも林檎は好きだった。

 ただ、次第にわたしの彼女への気持ちは変わり始めた。音楽的な才能はすごいが、ROCKIN' ON JAPANの表紙(イチゴをくわえてるやつ、今はお宝アイテムのひとつらしい)を飾り始めた頃からだろうか。彼女はインタビューの中で、「わたしはこんなに傷ついてますっていう感じのアーティストが嫌いなんです。」と話している。お前もそうなんじゃないんかと言いたくなった。自分の過去を笑って話してるとはとうに思えなかった。彼女の話やパフォーマンスは確かにおもしろい。もっている世界は独特だ。ただ独特を超越して毒々しい。あるときから彼女の格好に吐き気がしはじめたのは、なぜだろう。

 それはきっと彼女の性(さが)だ。女であることを痛々しくなるまでさらけ出す。例えば同じことをマドンナもしてきたが、マドンナの場合はすごくPOPだ。しかもひとりのフェミニストとしてやってのけたので、前向きさがある。でも林檎は違う。女であることを過度に追及して何がしたいのだろうと思わせるところがある。音楽や美術など芸術的な才能は認める。ただ、それを「女」としての彼女がわかりにくいものにしているのではないか、すばらしさよりも醜さをさらけだしているのではないかと感じる。あともうひとつ、究極の独りよがり。直球じゃなくてもいいが、あまりにもおかしな球なのでわたしは受け止めることができなくなった。

 冒頭にも書いたが、わたしは椎名林檎が嫌いだ。CDは3枚もっている。どれもすばらしい作品だと思う。でも、女としての彼女は嫌いだ。
| hammer | ロックな人たち | 23:26 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
Vol.1 スピッツ
スピッツは私の全ての原点である。

 わたしが彼らと深く関わることになったのは、中学2年のときの運動会であった。当時吹奏楽部でバリトンサックスたるものを担当していたときに、たまたまスピッツの『ロビンソン』を演奏することになった。運動会の『ロビンソン』なんてやると、思いっきりテンションが下がってしまいそうだったが、意外にもマッチしていたような気がする。思春期の妄想とスピッツの世界観がスパークしていたせいかもしれない。わたしが、スピッツの世界にずぶずぶとのめりこむきっかけがこのときであった。

 運動会は当然朝や昼だが、クラブの練習は夕方である。ちょうど季節の変わり目で夏が終わり、秋がやってくる瞬間の、あの夕暮れ時、昼と夜の境目の微妙な空気がおそろしく『ロビンソン』と化学反応を起こしてしまい、わたしを一気にトリップさせることになった。そして、高校に入るまでにほぼスピッツの全アルバムをすべて買い漁ることになる。

 中学生のときはただ好きで聴いていたスピッツだったが、年齢とともに人生経験を踏むにしたがって(えらそうなこと書いてごめんなさい。)だんだんスピッツに対しての聴き方が変わってきた。「かわいい」とか「キャッチー」という世間での見方に対して、疑問を感じるようになった。

 スピッツの曲は確かに「かわいくてキャッチー」だと思う。でもそれだけじゃないでしょ?かわいくてキャッチーなのは一部分であって、ほとんどは草野マサムネの妄想じゃん。エロエロ・ワールド満開の。小さいころから神がかり的存在とかどぶの中とか変なとこに興味を持ってそのまま大人になってしまった一種の変態の妄想が歌になって流れている。そしてそれをキャッチーでポップでロックな存在に変えてしまうのが、マサムネのマジックであり、三輪テツヤ、田村明浩、崎山龍男の3人の手腕なのだ。テツヤのスピッツに不似合いすぎるどきついルックス、プレイヤーとしてはスピッツの中でも群を抜いてうまい・崎山、そしてリーダーの田村の3人は「マサムネの曲に演奏がついていかないことは昔からわかってる」ということは認めている。でも昔はそうだったかもしれないが、今はもうそんな次元ではないと思う。

 今年10th album『三日月ロック』が発表された。ダイナミックな前作『隼』で頂点を極めてしまった感があったわたしは、「期待しないでおこう」と再生ボタンを押す前は失礼にも思ってしまったが、これはとんでもない傑作だ。音楽の幅はおそろしく広がっているし、どちらかといえばアルバム全体のバランス感覚が安定している『隼』と違って、アンバランスすぎてまとまりきれなくて、はみだしまくってという垂れ流しアルバムである。それでいて、1枚のCDにまとまっているという1作だ。もちろん妄想世界満載である。

 『Recycle』というベストアルバムがリリースされ、もう一度再スタートを切らなくてはいけなくなった。そしてその後に発表された『隼』で一気にバンドとしてのスピッツが成長を遂げた。成長期の男の子が思いっきり身長が伸びたような。そんな雰囲気の中で音作りの面ではバンドサウンドの充実、ロックミュージシャンとしてのスピッツが新たに確立された。ライブも精力的に行い、夏のイベントの主催をするなどかつての小さなライブハウスバンド枠に収まりきらない。だからそんなスピッツが「ロックだぜ!」的勢いのままでなく、さらにその自分たちのロックミュージシャン像をおちょくって、パロディ化している雰囲気も感じ取れる、この『三日月ロック』はすばらしいのだ。『ミカンズのテーマ』という曲はまさに「自分たちのことを歌った曲だ」と言っているように。

 10年のキャリアを持ちつつも、その地位に安定することなくスピッツはバンドとしてまだまだ成長し続けている。彼らももう35歳。「おやじですから」と開き直り、それでいて成長期が止まることがない。。『ヒバリのこころ』から『三日月ロック』まで、1枚1枚のアルバムの新しさがそれを物語っている。だからわたしはスピッツを聴き続けてしまうのである。
| hammer | ロックな人たち | 23:23 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |